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自分の考えを整理するため、あるいは誰かのためにブログを書きます。

「ファーゴ」視聴

映画

ファーゴ [DVD]

ファーゴ [DVD]


1996年製作。
公開当時日本語版の予告編を見た気がするのですが、何か物々しい雰囲気+低い声の男性がナレーションというダブルパンチで「ああ、シリアスなサスペンスドラマ?ミステリー?なのかな、暗そうな話だ。」と思ってそれきりでした。


大変傑作という噂を聞いて最近になってから観てみたのですが、想像していたものとまるっきり違いました。
サスペンスには違いないんですが、コメディの棚に置かれていても不思議ではない作品です。


物語自体はアッと驚くようなものでもなければ、感動できるものでもありません。
物語の舞台である雪降る田舎町の景色のように、ただ淡々と、単調に、しかし残酷な事件が進行していきます。
その物語を作り出すのは個性的ながらごく平凡な登場人物たちです。

  • 小心者の自動車営業マン。金に困って妻の偽装誘拐を試みる。全ての事件の発端。小手先の誤魔化しや取り繕いを重ねて自滅していくタイプ。おびえた小動物のような視線が特徴。
  • 偽装誘拐の実行犯。変な顔。映画中通して誰からも「変な顔」と言われ続ける不憫な人。割礼はしていないらしい。
  • 偽装誘拐のもう一人の実行犯。寡黙な大男。パンケーキが好き。キレたら何をするか分からないタイプの人。
  • 誘拐された女性の父親。自動車営業マンの義父。とんでもない守銭奴。娘の命と大金はだいたい同じ価値だと思っている。
  • 偽装誘拐の犯人が起こした殺人事件を追う女性警察署長。ストーリーとは関係ないけど妊婦。この物語で数少ないマトモな人なのに(というかマトモな人なので)存在が浮いてる。


どうですかこの平凡な一般人たち。
他にも「犯人を変な顔と言いながら自分も十分変な顔の女」「精神を病んだ女性署長の元同級生」「鳥の絵とか描いている女性署長の旦那」など、個性豊かな人物達が登場しますが、ストーリーとは全然関係ないです。


こんなにも物語の本筋と関係ないところに気合が入りまくっている映画は見たことがありません。
導入から「待ち合わせの時刻が本当は7時半か8時半か」「パンケーキを食うかステーキを食うか」で揉める*1というあり得なさ。
しかしそうして気合の入りまくった描写があればこそ雪降る田舎町の映像を通して人間のにおいが伝わってくるのであり、それが事件の残酷さと狂気を際立たせているとも言えるでしょう。
事件を起こしたのが人間であるなら、それをややこしくしたのも人間。犠牲になるのも人間であり、解決するのも人間です。
そのような当然のことでも「人間」へ徹底的に焦点を当てることによって、強く印象的なテーマとして心に残るものとしているのです。


「とにかく変な顔」と証言する変な顔の女二人組のシーン。

最後の「Yeah」で毎回吹くw

*1:しかもストーリーとは全然関係ない